会長挨拶:2012年2月

久方ぶりの大寒波で厳しい寒さがつづいておりますが、歴史学会の会員の皆さま、お変わりなくお過ごしでしょうか。

昨年は、春先に東日本大震災とそれにともなう原発事故がおこり、自分の生き方をふりかえらざるをえなかった皆さんも多かったと思います。歴史学会の大会・総会も、あの事故の影響もあって、例年よりも遅く12月4日(日)に明治大学駿河台校舎で開催されたのですが、さいわい無事に終了することができました。「都市の『再開発』の諸相」をテーマとしたシンポジウムは、たいへん充実したものでした。報告とコメントをされた松山恵(日本史)、初田香成(日本建築史)、菊池敏夫(中国史)、羽貝正美(西洋史・都市行政学)の各氏に、心から御礼申し上げます。また、大会・シンポジウムの運営に当たられた理事の皆さん、ご苦労さまでした。

とはいえ、シンポジウムの参加者は相変わらず少なく、その点が残念でなりません。このまま地道な学会活動を継続すべきなのか、それとも多くの参加者が見込めるような大会にすべきなのか。これは、ここ数年の歴史学会の大会・シンポジウムを目の当たりにして、たえず脳裏に去来するジレンマです。昨年の大会直後に、「戦後史学と社会運動史」をテーマとしたシンポジウムに参加したことも、そのジレンマを強めることになりました。このシンポジウムは一私立大学の主催で西洋史に限定されていたにもかかわらず、会場には大勢の人びとが詰めかけていたからです。ここ二,三年、二宮宏之、遅塚忠躬、柴田三千雄の三先生が相次いで亡くなり、わが国の西洋史学の一時代が終わったという思いが共有されていたということなのかもしれません。ともかく、史学史への関心が高まっていると感じました。そんなことがあって、今年度のシンポジウムでは、史学史がらみのテーマでやるのも面白いのではないかと愚考する今日この頃です。

2012年2月 歴史学会会長 松浦義弘