会長挨拶:2012年4月
暦の上では春となっても例年になく寒い日が続いておりますが、歴史学会の会員の皆さま、お変わりなくお過ごしでしょうか。
すでに、多くの会員の皆さまがご存じのことと思いますが、前会長の吉原健一郎先生が、去る3月22日、肺がんのために亡くなられました。通夜に参列したさいに聞いた話では、3月初めには2時間の講演をされたということですから、とつぜんの訃報でした。夜、普段どおりに就寝されてそのまま息をひきとられたということでした。
吉原先生が肺がんであったことは訃報に接してはじめて知ったのですが、先生が若い頃に埃にまみれた古文書の調査にたずさわり、その結果として肺疾患をわずらったことは聞いておりました。歴史学会の大会・総会でおめにかかったさいも、他の人たちよりもゆっくりとしたペースで苦しそうに歩いておられたのが印象に残っています。埃まみれの古文書調査で肺をわずらったという話には、自国史と外国史との位相の違いを感じざるをえませんでした。
吉原先生は、西洋史専攻の私からみれば、すでに多くの著書・論文を書かれていて、学問的にやるべきことはやってしまわれたのではないかと思っていたのですが...