第4回月例研究会

・日時  2007年5月18日(金) 18:30から 
・報告  李里花氏(一橋大学大学院)
     「太平洋戦争下のハワイ・コリアン移民社会のナショナリズム
     ―「敵性外国人」から「友好的外国人」への語りの形成―」

発表要旨
太平洋戦争中のハワイ戒厳令下、コリアン移民は「日本人」移民に分類され「敵性外国人」に範疇化されたが、これに対してコリアン移民はどのような語りを形成し、移民のナショナリズムはどう再編されたのであろうか。本発表では戦前・戦中の移民社会に関するデータを提示し、戦中のコリアン移民の語りがアメリカのナショナルな語りに構造化されていく過程に注目し考察した。そして戦中に形成されたコリアン移民の語りは、(1)開戦直後は(「日本人ではない」ことを強調するために)アメリカとコリアという二重のナショナリズムを孕むものとなったが、(2)アメリカ国民化が強化される中で二重のナショナリズムが問題視され、それにより移民社会の固有性と正統性がハワイの多民族社会の結束原理の中で再定義されていく過程が明らかとなった。すなわち戦中のコリアン移民社会の語りの形成は、アメリカ国民化と民族化の両契機を孕むものであった点が考察された。