第3回月例研究会

・日時  2007年4月24日(火) 18:30から 
・報告  綿貫哲郎氏(日本大学非常勤講師)
     「清朝における八旗漢軍旗人の多元性について」

発表要旨
八旗漢軍旗人とは、一般には清朝(後金国を含む。1616~1911年)八旗制度のもとにいた漢人を指す。
八旗漢軍旗人の分類に関しては、これまで入関(一六四四年の北京遷都)が境界とされ、入関前の八旗漢軍旗人が特権的(世襲が無期限の世職[爵位]を有する)といわれた。これは清朝の中国王朝的側面を補完するものであった。報告者は、近年の清朝を内陸アジア世界の帝国として捉える研究の視座より、新たな知見を得ることができた。すなわち、「旧漢人」「新漢人(入関前)」「新漢人(入関後)」の三大分類である。
「旧漢人」は、主に第一世代が清太祖ヌルハチの庶子と姻戚関係(交換婚)にあり、第二世代以降には地位が上昇し旗王(清太祖ヌルハチの嫡子孫)と姻戚関係を結ぶが、旗色については第一世代の姻族と行動を共にする漢人集団を指す。「新漢人(入関前)」は、清太宗ホンタイジ期に清朝に帰順した明朝の旧官兵を指すが、彼らは入関後もドルゴン期終了までは、これまで言われたような特権的身分ではなかったことを、ドルゴン期の同時代資料がないため、誥命・勅書(共に清朝皇帝が与えた爵位等の証明書)等から明らかにした。