第6回月例研究会

日時 2007年7月20日(金) 18:30から 
報告 木畑和子氏(成城大学文芸学部教授)
   「亡命とアイデンティティ 第三帝国期ユダヤ人の「子供」の出国をめぐる問題を中心に」
会場 明治大学リバティータワー20階

発表要旨
ナチの対ユダヤ人政策の基本は、絶滅政策に転換するまで強制的出国政策であったが、同化意識の強いドイツのユダヤ人の多くはなかなか出国しようとしなかった。彼らがドイツ人であることを否定され、ドイツに留まることが彼らにとって命の問題であると認識されるようになった時期には、諸外国は厳しいユダヤ人受入制限を設けるようになっていた。
38年の11月ポグロム後、ユダヤ人の子供を受け入れるキンダートランスポートという運動によって、約1万人がイギリスに救出された。子供たちの里親は国内の反セム主義の興隆を恐れるイギリス政府やユダヤ人社会により、地域的に拡散させられた。キリスト教徒の家庭に引きとられた子供には、ユダヤ教徒としてのアイデンティティ喪失の危機という問題も起こった。年長の子供たちのなかには、敵性外国人であるドイツ人として強制収容されるものもいた。本報告ではその収容中に亡命ドイツ共産党員の影響を受け、「ドイツとナチは違う」とする反ファシズム運動に加わり、戦後東ドイツに戻ったユダヤ人青年たちに光をあてて、論じた。