第7回月例研究会

日時 2007年10月19日(金) 18:30から 
報告 岡田敏樹氏(神奈川県立綾瀬高校教諭)
会場 明治大学リバティータワー12階

報告の骨子
近年、高校の現場では歴史教育の「教育内容」についての議論が大変低調であると感じます。職場の多忙化も原因の一つではありますが、それ以上に関連があると思われるのが「要求される授業改善」の動きです。乱暴に要約すれば、「教えるべき内容は文部科学省が学習指導要領で決める」「現場の教員はそれに余計な口をはさむな」「お前たち教師は生徒や保護者に評価されるよう授業のやり方を工夫せよ」という動きです。
いまや、講義一辺倒の授業が成り立たないのは、高校で広く見られる現象です。生徒の視線で授業を工夫することは悪いことではありません。問題は行政からの動きも含めて、現場の教員が「教育内容」に対する関心が希薄になり、「教育技術」にのみ関心を持つようになっているのではないか、という点にあります。
こうした問題点を、実際の歴史教育の場で議論されているいくつかのテーマを素材に検討してみたいと思います。

発表要旨
2007年教科書問題ともいうべき「沖縄戦検定」をめぐる沖縄県民の動向は、歴史教育・歴史研究に何を問いかけているのだろうか。研究の側からの批判に耳を傾けると同時に、教育に携わる者として、改めてこの問題を歴史教育・社会科教育を見直す好機とすべきであると考えたい。
報告では、まず、高校現代社会で「沖縄戦検定」を取り上げた授業実践を紹介した。授業では、沖縄戦における「集団自決」とは何か、それをめぐる教科書検定はどのように行われたのかを取り上げた。生徒が使用している教科書には何と書いてあり、検定の結果、その記述はどう変わるのか、沖縄修学旅行「チビチリガマ」での体験学習をふまえて、生徒に考えさせた。
一方、この間、社会科教育にも「構成主義」の影響が及んでいる点を紹介した。「新しい学力観」と「構成主義的歴史教育」をどうとらえるべきか、池野範男氏による「批判主義「市民社会科」」の提起を紹介した。さらにこうした問題提起がなされるなかで、歴史教育における「通史」学習を小中高校の社会科教育のなかで、今現在、どう考えるべきかについて、近年の議論を紹介した。